Go!プリンセスプリキュア第45話
「伝えたい想い!みなみの夢よ大海原へ!」
(2015年12月20日放送)


ネタバレを含む考察・感想記事となります。

シリーズディレクター:田中裕太
脚本:成田良美
絵コンテ:芝田浩樹
演出:芝田浩樹
作画監督:赤田信人
美術:篝ミキ

夢のプリキュアクリスマス

それは遠い日の思い出。

あせ (8)


「波はどこから来るの?イルカさんはどうしてあんなにジャンプできるの?海はどうして青いの?」


娘に好奇心が生まれたことを喜ぶ父。
そして娘に教えます。
本当に知りたいのなら自分で海に飛び込まねばならない。自分で答えを探すために。

あせ (20)


それが夢の始まりだったと北風先生に告白するみなみさん。
北風先生と出会うずっと前からその夢は自分の胸にあったのだと。
しかし、それを両親へ話す決心がまだついていませんでした。



その頃、敗北続きで気を紛らわすためか、アイメイクに凝るシャット。

あせ (31)

首領ディスピアへその美しさをお披露目しようとする彼ですが、「失敗作だ」「愚かだ」とついに見限られます。
(何気に三銃士がディスピアから生み出されたと言及されています)
ディスダークに必要のない美しさに拘ったシャットを処分しようとするディスピアでしたが、シャットの懇願を受け最後のチャンスを与えます。



クリスマスムードで湧くノーブル学園。
みなみさんに届けられたのはお母さんからのクリスマスカード。
嬉しい気持ちの反面、新しい夢のことを伝えられない、ノーブル学園への入学や多くの習い事をさせてくれたのに期待に応えられない申し訳なさで複雑な心境も…。

そんな暗い雰囲気を払しょくするためにクリスマスパーティーを楽しもうときららは励まします。

女子寮で繰り広げられるクリスマスパーティー。
ゆうき君のファンチームによる団体芸、そしてまたもや大活躍のらんこ先輩。
あせ (57)
あせ (59)





どの方向に進みたいのか全く分からない大道芸。

「らんこさんすご~い」(はるか)
「芸達者だね」(きらら)
と字面では絶賛していますが棒読みです(笑)

更にゆいちゃんがパフで腹話術をするという……これ厳密にいうと芸じゃなくて詐欺の類…(言っちゃダメ)
アロマによる早口言葉も場を盛り上げます。

あせ (60)


そして、クリスマス限定ユニット「ザ・プリンセス」によるライブでございます。
いつものプリキュア4人チームがクリスマスコスチューム……良いですねぇ…期間限定アイドルユニット。

あせ (77)


基本的に観客は皆大絶賛なのですが、らんこ先輩だけは愕然としています(ライバル視しているきららの晴れ舞台となっているから焦っているのだと思われます)


詳しくは後半の内容とリンクするのですが、今回のメインとなるみなみさん主軸の物語は「アフターエピソード」とも言える内容で25分近くの尺は難しい(やろうと思えば出来るでしょうけど)
なので時期的にタイムリーなクリスマスイベントで画を華やかにしようという判断があったのだと思われます。
そしてそれは大英断で大正解でしたね……このくらい振り切ってイベントを楽しむ気概、大好きです。


そんな時、みなみさんにお母さんから電話が…。
直接メリークリスマスを言いたかったから……娘の事を心底気遣い愛している母の優しさにみなみさんの目からとめどなく涙が流れます。

あせ (94)

はるかたちはその涙も両親を思うみなみさんの優しさなのだと理解し、今すぐ想いを伝えに行こうとアドバイスします。

あせ (98)

「悩むのはその後にしましょう」(はるか)

一方の追いつめられたシャットはホープキングダムの海の城、まだ目覚めの時を経ていない自分にとっての脅威の城をメツボーグ化させ、プリキュアへ急襲をかけます。

たまたま居合わせたのが支度を整えるため、一人になったみなみさん。
単身マーメイドへ変身し応戦しますが、一人だけホープキングダム、海の城があった場所へ転移させられます。
それはシャットの各個撃破戦術だったのです。

祝福される夢【それが家族という繋がり】

ですがシャットの思う様には行きません。
カナタの助けを得て、フローラたちも戦場へ転移してきます。
メツボーグはそれでも猛威を振るい、海を絶望に染め上げます。

マーメイドはそれを黙ってみてはいられませんでした。
あせ (134)


「終わらない!!海からは感動や好奇心、そして夢が生まれる」(マーメイド)
「何が生まれても意味はない!生まれた夢は敗れるのみ!お前たちがいくらあがこうとも最後は絶望に終わるのみ!!」(シャット)
「時に絶望や困難に呑まれることはあるでしょう…でも、それでも!!」(マーメイド)
「なに!?」(シャット)
「絶え間なく生まれ続ける、困難だと分かっていても叶えたい夢が生まれる!
海も私たちの心も決して絶望で満ちたりはしないわ!」(マーメイド )


プリキュア・コーラルメイルシュトロームでメツボーグにダメージを与えるマーメイド。



「私は海のプリンセス、キュアマーメイド!海と夢を汚す者は…私が成敗します!!」(マーメイド)

守りたいからの一点だけではありません。
自身に新しい夢が生まれた迷いそして掴み取ったから、その実感があるから生まれることを肯定し、終わることを否定する…本人が自認するまさに「海のプリンセス」の貫禄。

一方のシャットがこれまでポリシーとしていた「美しさ」以上に終焉・絶望に拘っているのは彼自身が「自分が終わるかもしれない」という恐怖に囚われているからなのでしょう。

グランプランタンによってメツボーグは浄化されますが最後のチャンスを棒に振ってしまったシャットは発狂寸前の叫びを上げて撤退します。

マーメイドによって目覚めた海の城。
青い虹が差し、ホープキングダムの海が絶望の森から解放されます。


両親の下に向かうみなみさんを送る為やってきたお兄さん・渡さん。
その車中で渡さんはみなみさんが悩んでいるらしいことに気づき相談に乗ろうと思っていたと明かしますが、吹っ切れたことを悟り妹がこれからしようとすることを応援します。
あせ (156)



突然現れた息子と娘に驚く海藤家ご夫妻。

あせ (160)


みなみさんは「ごめんなさい」という言葉を切り口にし、両親に新しい夢が出来たことを告げます。
きっと残念に思う顔をするに違いないと思って不安だったみなみさんでしたが、2人は「おめでとう」と祝福します。

あせ (165)


「大海原に飛び込む時が来たようだな、ブラボー!」(つかさ)


「わがまま」を許すのかと驚くみなみさんでしたが、2人は新しい夢が出来たことを心の底から喜んでいます。


あせ (170)

「あなたは昔から優しい子だったわ。優しすぎていつも自分より私たちのことばかり…そんなあなたが自分のやりたいことを見つけた。嬉しいわ」(ますみ)
「海から様々な物が生まれるように、お前からは夢が生まれたのだ。みなみ、自分の信じる道を行きなさい。
お前の喜びが私たちの喜びなのだから」(つかさ)



再び流す涙、でもそれは悲しいから、不安だから、申し訳ないからではなくて……。


あせ (172)

娘の新しい夢というクリスマスプレゼントを受け取った海藤家は家族水入らずでクリスマスの夜を迎えます。


総括

自分の心が訴えていた本音に気づいたみなみさんの夢の第2章両親への告白をクリスマスイベントやシャットとの対峙に絡め、クライマックスの余韻に浸りたくなる実に繊細なお話でした……カタルシスってこういうことですよね。

気遣い合うことそれ即ち愛の証。互いが互いのことを常に大切に想い合っている海藤家の家族の形が心に沁みてきます。

娘が自分の気持ちで選んだこと、心から望んだ選択を我が事のように喜ぶ…それが何にも勝る喜び。
みなみさんも両親の胸中を考えるあまり、わがままを突き通したら悲しむのではないか?と不安に思っていました。
それもまた愛ですし、仮にそれがわがままであったとしても歓迎したいというお父さんの台詞、これを言い切らせたのはやっぱりプリキュアが家族という価値観を大切にしているから出来ることだと思います。


本話が秀逸だったのはみなみさんの家族周りの描写が繊細だったこともありますが、もう一つ「シャットとの対比」が実に巧妙に描かれていたことも大きいと思います。
ディスピアから生み出されたと明かされたシャット。この時点で二人の関係は親子と言っても相違ありません。

親であるディスピアはシャットが掲げるあり方「美しさ」と彼の存在を全否定します。
それはディスダークの依って立つところである『絶望』に利するあり方ではないから。

子供がたどり着いたステージを肯定するのか、否定するのか。
自分にとっての損得で判断するのか。

家族に祝福されたみなみさんとディスピアに否定されてしまったシャット。それぞれの境遇は正反対のものです。
(また更に細かく見ていくとみなみさんの新しい夢は北風先生との出会いが背中を押したものであり、
シャットの美しさへのこだわりと落日はかつてのトワイライトの存在が大きく、『他者からの感化』という点で類似しています)

更にこの二人をバトルシーンでは

「命を育み海とそれでも生まれ続ける夢」を背負って立つマーメイド

「終わる命と夢を呑みこむ絶望」に自身も追いつめられているシャット

という一種思想のぶつかり合いを思わせる対峙を見せてくれます。


シャットに関してはこの回だけでも大きな役割を果たしていると言ってもいいのですが、これが更に伏線として機能し次回以降で花開くことになるとは……シリーズ全体の計算が上手い作品だと言わざるを得ません。



次回は第46話「美しい…!?さすらうシャットと雪の城!」となります。
美しさに魅せられていたシャットとトワさんの因縁の決着となります。

次回も乞う、ご期待!!