Go!プリンセスプリキュア第43話
「一番星のきらら!夢きらめくステージへ!」
(2015年12月6日放送)


ネタバレを含む考察・感想記事となります。

シリーズディレクター:田中裕太
脚本:田中仁
絵コンテ:黒田成美
演出:岩井隆夫
作画監督:爲我井克美
美術:斉藤優

けじめとは?

元気いっぱいにマーブルドーナツを頬張るきらら。
ゼツボーグが現れたら真っ先にトゥインクルに変身し、瞬く間に蹴散らすきらら。
自分のファンが現れたらそそくさとその場から去るきらら。
同級生たちとの遊びに興じるきらら。
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前回の一件以来、様子がおかしい、あえて明るく振る舞っているきららに違和感を感じるはるか達。
ついにはモデルを休業すると言い出し、舘社長、かりんちゃん、更にはボアンヌさんが来訪。

あなたの輝きを曇らせるのは惜しいから、とボアンヌさんは仕事の話を持ってくるのですがきららは断ります。
(大物であるボアンヌさんからの仕事を受ければ業界内の風当たりも軽減できる…という意味合いがあったのだと思います)

モデルは大切な夢だったのではないか?
親友であるトワさんは切実にきららに問います。
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「だからだよ。私、200%の力でプリキュアもモデルもやれると思ってた。でも、駄目だった…。
こんな半端な気持ちで仕事したら社長や沢山の人に迷惑かけちゃう。それこそプロ失格だよ…」(きらら)

「プリキュアの使命のため、自分の夢を犠牲にするというのですか?」(トワ)
「そう、決めたんだよ…」(きらら)



非情な選択ではありますが、一理あります。
物事を計る基準がこうしたいああしたいという自分の願望だけでなく、「プロとして迷惑をかけることを良しとしない」ということなんですよね。
5話でプリキュア入りを決めた時は「自分の力量でどちらもこなせるのか?」という問いかけが主だったと思うのですが、ここに来てぶつかったのは「他人へ迷惑をかけることの是非」。
大人になって社会に出ると直面する問題、夢を叶えようとするならいずれ叩きつけられるであろう問題。
ゼツボーグがあのタイミングで出てきたことそれ自体が不運なのではなく、どこかでこの問題に悩まされる時が来る…そういう必然だったのだと思います。


はるかやかりんちゃん達は何とかしてきららの夢の輝きを取り戻したい…方法はないのか?
そう思ってはるかは夜空を見上げ、ある方策を思いつきます(雲が去り、輝く星を見て思いつくという演出が実に象徴的です)
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学園長の許可を得て、生徒たちの協力を取り付けて、その準備は始まりました。

ここでまた学園キャラほぼ全員再登場できるのがゴープリの強みですね。


時は来ました。
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謎の招待状を受け取ったきららを待っていたのは「ドリームファッションショー」なるサプライズイベントでした。

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星の輝きは止まらない


生徒各々が抱く夢、それを具現化させた衣装でランウェイを歩くファッションショー。

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すっ転ぶ者、恥ずかしがる者、気合を入れる者、会場をジャックする者(もしかしなくても一条らんこです。直後、柔道部員に連行され強制退場させられます)

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コミカルな場面も多いですが、個々人それぞれの輝く夢が舞台を彩り、かりんちゃんも登壇します。
憧れのきららの再起の為多少緊張した面持ちでランウェイを歩くかりんちゃん。

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その笑顔からきららはかつての自分を想起します。
そして、はるかがショーの感想を求めますが「全然だめ。見てられない」とバッサリ。

「そりゃ、本当は見る側じゃないからねきららちゃんは」(はるか)

上手い返しですよ、これ。

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「初めてきららちゃんのショーを見た時、本当に凄いと思った。
とっても綺麗でカッコよくて…私もこの人みたいにまっすぐ夢を追いかけたいって本当に思ったんだ。
きららちゃんのみんなの夢を守りたいって思うのと同じように、私たちもきららちゃんの夢を支えたい、力になりたい。
だから、どうか……夢を追い続けて」(はるか)



思えばきららという存在はプリンセスプリキュアの中で最も自分の夢というものを追求していた子です。
はるかがその存在に惹かれたのもプリキュアだったから、ではなく、そのポリシーに強く共感したからなんですよね。
人の夢を守りたいという想いは尊重したい。
だけどそれと同じくらい、夢に向かって頑張るきららも好ましい、その輝きを失わないで欲しい。

はるかの「夢を追い続けて」という言葉はかつてカナタから送られた「夢を忘れないで」という言葉に非常に近いものを感じます(台詞回しも似てる気がしてならないですし、「どうか」という言葉の使い方は1話の記事で類似性を指摘した少女革命ウテナの王子様の台詞に近い物を感じます)


きららはステージに立ちます。
はるかやトワさんたちが手作りしたドレスを着用して。

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作画クオリティも相当……心の輝きがそのまま反映されてるかのような眩しさを放つきらら。

「全くお節介さんがこんなに…あ~あ、やっぱり。楽しいや」(きらら)

「さて、あなたの夢は?」(みなみ)
「きらきら輝く一番星、世界一のトップモデルだよ!」(きらら)


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「楽しいや」って言葉ですよね。彼女の感情を一番分かりやすく言い表しているのは。

この場面に出くわすと自他ともに認めざるを得ませんね。天ノ川きららはモデルとして輝く存在だと。

このステージに惜しみない称賛を送ったのはボアンヌさんでした。
きららに改めて話があるという彼ときららのやり取りは聴衆の歓声で掻き消され視聴者には伝わりません。
しかし、偶然その場に居合わせたゆいちゃんの表情が困惑を作りだし、何事か?と視聴者をやきもきさせる演出に仕上げています。


きららが再び夢を志したことでホープキングダムの星の城が目覚めるべく再び輝きます。
それを察知したディスピアは妨害すべく、竜型のメツボーグを生み出し人間界へ送り込みます。

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迎撃に出ようとするプリキュアたち。しかし先の動揺を引きずっているのか、きららを見送るゆいちゃんの表情が固い…。


敵メツボーグの威容に驚くプリキュアたちですが、きららはいつもの余裕を崩しません。

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「なんでもいいよ!絶対負けないから!!」(きらら)


パワフルな戦い方でメツボーグと渡り合うプリキュアたち。

印象的なのがマーメイド、スカーレットの援護を受けて「サンキュー…」と安らかな表情で自由落下していくシーン。
孤軍奮闘なのではなく、チームとしての絆それをトゥインクルが実感するシーンを挟んだのがなかなか好印象です。
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「あたしはもう止まらないよ!!」(きらら)

トゥインクルによる怒涛の連続攻撃、特に流星が多数降り注ぐ「プリキュア・ギャラクシーコーラス」は圧巻の映像。


メツボーグを浄化した後、ロイヤルキーが光り出し「ロイヤルマジェスティ」と唱えるトゥインクル。
それはトワさんの時と同じく、城を目覚めさせるためのステップでした。
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トゥインクルによって目覚めた星の城はエリア一帯から絶望の森を駆除し、闇に覆われていた空を元に戻します。



戦闘後、きららははるか達に語ります。
ボアンヌさんが新しく立ち上げるブランドの専属モデル候補として育てたいという申し出があったと。
喜ぶ一同でしたが、それが意味することはきららがパリへ旅立つということ。
春までに行かなくてはならない、つまりノーブル学園にいられる時間はあとわずか。

悲しみかける一同ですが、はるかはそれまでにグランプリンセスになってホープキングダムを救わなきゃと言ってのけますが、目に浮かべているのは涙。


きららが決めた夢の道ならば、それを全力で応援したい。悲しみで引き留めたくない。
はるかのそんな気遣いなのでしょう。

きららは笑顔でその気持ちを受けとめます。


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「あたしは天ノ川きららだよ!!」(きらら)



総括

挫折からの復活……プリンセス全員いや夢を叶えようとする者ならば必ず経験するであろう物語。
この終盤に来て、しかも主人公じゃないプリキュアで前後編をやるという例のない大英断に驚くも圧倒的なカタルシスに心打たれる名作回となりましたね。

夢が眩しいことを知っているから、守りたいと思った。だとするなら一度は捨てようと思った夢をやっぱりまた掴みたくなる…この感情がとても効いてきますね。


二者択一を求められた時、どちらもという選択肢はない。
前回描いたその現実をきちんと踏まえた上で、時間的猶予を貰えたというのは大人側の夢の理解者として描かれたボアンヌさんの功労なのでしょう(ご都合主義とは言いたくないなぁ……)。
望月先生然り、錦戸先生然り、それぞれの両親然りでこの作品の大人は常に「理解者」としてのポジションを貫いていて、その構図自体が「人という存在の繋がり・続いていくことの尊さ」を訴えているのだと個人的には思うんですよね。

子供というピースを主軸にすることと「子供だけ」は違うもので、大なり小なり大人という存在が関与して子供の成長を描く必要性、プリキュアに特にそれが強いと思います。



さてさて、もう一つ感じたのがはるかの成長著しいというのが伝わる作劇だったという点です。
前述した通り、夢の大切さを説いたカナタをダブらせざるを得ない役割と台詞を担っていましたし、いずれ来るきららとの別れを告げられた際雰囲気が暗くならないよう真っ先に応援したのが彼女なんですよね。


やはり39話での出来事があったからこそ、と思うんですよね。
特にクローズに指摘された「それぞれが夢を追えば追う程、仲間同士は離れていく」という構図が今回そのまま叩きつけられたわけですが、はるかはそれでも諦めずにいられると答えを導き出していたので複雑な思いはあれどきららを快く送り出せるんですよね……。


最も夢の最先端を走っていたあの輝きを失わないでほしい……そんなセンチメンタルなはるかの想いを感じる回でした……。


まとめ的なことを言わせてもらうと、プリキュアとして戦う事で夢を守る道もある一方で夢を懸命に追いかける姿が人の胸を打ち、新しい夢の想像に繋がっていく…これもまた夢の力の素晴らしさではないでしょうか?
繋がり合うから人という存在、夢という想いは尊いのではないでしょうか?



次回は第44話「沸き上がる想い!みなみの本当のキモチ!」となります。
みなみさんがファッションショーの司会に徹し、自分の夢を見せなかったのは何故なのか?
そのことに大きく絡んだ最後のメイン回となります。

次回も乞う、ご期待!