ウルトラマンガイア 第16話「アグル誕生」(1998年12月19日放送)

ネタバレを含む考察・感想記事となります。

金属生命体 アルギュロス  登場

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監督    北浦嗣巳
脚本    吉田伸
特技監督 北浦嗣巳

プロノーン・カラモス


サブタイトルが示すように今回は我夢ではなく、藤宮が主体となるストーリーが展開されます。

かつて現れたアパテーと同族の金属生命体アルギュロスが突如出現。

飛行し続けるこの物体に先手を打ってウルトラマンアグルが攻撃、激しい戦いが繰り広げられます。
その苛烈さは同じく迎撃に現れたチーム・ライトニングも巻き込みます。

アグルとライトニングの攻撃を受けて爆散するアルギュロスですが、我夢はアグル=藤宮が我を忘れて攻撃を行う姿に違和感を感じます。
が、すぐにその理由に彼は気が付きます。

アルギュロスが向かっていた先には未確認粒子の研究施設『プロノーン・カラモス』があり、この施設はアルケミースターズを脱退した藤宮がダニエル議長から借り受けていた施設です(我夢の記憶によると、藤宮の脱退と我夢のアルケミースターズ入りは同時のタイミング)


敵はプロノーン・カラモスを狙っており、恐らく藤宮もその施設にいるのではないか?と予測した我夢、そしてアルギュロスとの戦いで疲弊した藤宮もプロノーン・カラモスへ向かいます。


そして時間は4年前に遡りクリシスの起動、根源的破滅招来体の予言、アグルが誕生した経緯…謎に包まれていた出来事が語られます。





アグル誕生・それは天啓なのか

4年前。藤宮はアルケミースターズのメンバーや女性科学者・稲盛京子博士と共に光量子コンピューター『クリシス』を開発し、その初起動に成功します。
ですが、早々にクリシスは根源的破滅招来体の襲来、それによる人類と地球の滅亡という衝撃の未来を導き出し藤宮たちを驚愕させます。
更にこの時、クリシスから流れる電流を浴びた藤宮は青い巨人のイメージを垣間見ます。

アルケミースターズは総力を挙げて、破滅招来体の解明、そして破滅回避の方法を見つけ出そうとします。
その過程で藤宮は地球を救済する唯一の方法を偶然発見してしまいます。


それは『人類』という存在をこの地球から抹消するという選択でした……。


しかし、彼はこの時点においても人類抹消、現在の時間軸で選んだ道を歩みはせず別の方法を模索します(自分の見つけた選択が間違いであって欲しいのか、クリシスのバグチェックを何度も行っていた模様)。


そんな藤宮を惑わせていたのが度々自分の脳裏に現れる青い巨人。
この時、藤宮のコンピューターに突如『AGUL(アグル)』という文字が映し出されており、これがアグルの名前の由来となっているようです。


その後、アルケミースターズを脱退した藤宮はプロノーン・カラモスへ稲盛博士を招き入れ、新たな粒子を観測する実験に没頭します。
地球の粒子は発見され尽くしたものの、地球の破滅が訪れるなら自然治癒力(生き物が自分で治そうとする自然発生の力)が発生し、何らかのアクションを起こすはず…。


地球の破滅、人類の抹消、謎のアグル。

人1人が背負うには重すぎる物を見過ぎてしまった藤宮は地球の本当の意思が知りたかったのです。

しかし何か月に渡って観測しても何の変化も起きず、稲盛博士も半信半疑でした。

ですが、その日は突然やってきました。

業を煮やしアグルに答えを求め叫ぶ藤宮はそのイメージを克明に見てしまいます。

雷鳴がとどろく中で佇む青い巨人。
その足元に広がっていたのは破壊された街。

街とは文明そのものを意味すると解釈するとこれは『青い巨人アグルがその手で人類を滅ぼす』というメッセージに受け取れます。
恐らく藤宮もそう解釈したのでしょう。
彼は怯えるように実験を中止しようとします。

「観測はやめだ!もし地球に自らの命を守ろうとする力が生まれたとしても、それが人類を救う力とは限らない。
もしも生まれ変わるとしたら煩わしい物を取り除こうとする方が自然だ…人類はこれまで地球に何をしてきた?いざという時だけ守ろうとしてもらうなんて虫が良すぎる!」(藤宮)

「怖いの?」(稲盛)
「怖いさ…また俺が人類の不幸を発見するんじゃないかってね…」(藤宮)
「なら観測は続けるべきよ。可能性を捨てるなんて愚かな事だわ。
そうしなきゃ、あなたは自分が背負ってる苦痛から解放されないわよ」(稲盛)



自分が見た物の意味に半ば気づき焦燥する藤宮。
都合の悪い物に目を逸らそうとする姿勢は人間としてものすごくリアルです。
それに藤宮自身が救われるためにも続けるべきであると主張する稲盛博士の人間味もなかなか良い。

そして、研究所のセンサーは突然反応します。
地球の意思である光がついに現れたのです。

地球の意思に触れることを恐れていた藤宮ですがその光を前にした時彼はその力に魅入られたのか、アグルが見せたイメージを受け入れ光の中に消えていきました。


以降、稲盛博士は一人で観測を続け、藤宮のペットハムスター『リリー』の面倒を見ていたようです。

プロノーン・カラモスに辿り着いた我夢は一部始終を稲盛博士から聞かされますが、一方の藤宮も施設内部に辿り着き粒子観測を行っていたプール、アグルの光を掴んだその水の中へ飛び込みます。



「アグルよ。地球の危機が運命なら、人類の危機が運命なら地球の意思に沿って行くことが人類に残された人類の道なのか?
それを導くのがアグルの力…アグル、再びお前の力を!!」(藤宮)



藤宮は新たな力をここで掴みます。
その姿はガイアの力を求めた1話の我夢とそっくりです。


しかしここでなんと生きていたアルギュロスがプロノーン・カラモスを襲撃します。
新たな力を得たアグルがこれを迎撃するために現れます。
この際に稲盛博士の安否を確認していることから藤宮が稲盛博士を大切に思っていることが窺えます(多分恋愛感情ではないと思いますが)


アルギュロスはアグルをコピーし、そっくりに変身。
偽ウルトラマンとの戦いというシリーズ構成の展開。

本物のアグルは偽者に一時苦戦しますが、パワーアップしたアグルはアルギュロスをフォトンクラッシャー同士の押し合いに競り勝ち撃破します。


戦いの後、互いの意見をぶつけ合う我夢と藤宮ですが人類破滅は地球の意思であると主張する藤宮と我夢が分かり合うことはありませんでした。

今回描かれた人類抹消はどこか嘘であってほしいと願った『過去の藤宮』とそれを地球の意思であると信じ切り、アグルの力がその証明であると主張する『現在の藤宮』は違うのだと強調する意図の演出だと思われます。上手い。


我夢と別れた藤宮は遠目から稲盛博士とリリーを見つめますが、その視線に稲盛博士が気づき視線を返します。
が、藤宮はすぐにその場を後にします。




総括


アグル誕生の謎が藤宮のその時々の心情と共に赤裸々に語られ、彼が何故我夢と対立せざるを得ない思想を持つに至ったのかが分かりやすく理解できる内容になっていたと思います。


アグルの新たな力を求めた際の姿は第1話の我夢に似ていたのですが、藤宮はアグルのイメージを見る度に恐怖し、一度はそれを遠ざけようとしていました。
ウルトラマンの力を自分から求めた我夢との決定的な違いを見せつけられたような気もしますし、人類が滅びることを良しとする現在の姿とのギャップから『変貌すること』の恐ろしさが見て取れます。

またこの回でシリーズ伝統の『偽ウルトラマン』が登場したのも一つの見所でしょう。

アグル誕生の聖地を狙い、自分と同じ姿をした偽者ウルトラマン。
しかし所詮は偽者であり、自分のやってることはそのまま地球の意思の体現なのであると再確認したアグルによって撃破され、『人類抹消』の正しさを信じる藤宮の決意の固さを証明します。

姿形は同じでも貫こうとする信念の強さの違いを如実に表すために偽ウルトラマンを登場させたのかな?と思います。
この作品が恐ろしいのはそのアグルが貫こうとする信念が人類にとっての脅威そのものであり、もう一人のウルトラマン・ガイアと全く相容れないということですね。

一筋縄ではいかない。だけれども、目的を抱くまでの過程にはそれなりのドラマと葛藤があったのだ。
対立する二人のウルトラマンのドラマに更に深みが増しましたね。


次回は訪れた危機にガイアとアグルの対立がさらに深まり…を描く第17話「天の影 地の光」となります。
この回は18話と前後編の形となるのでもしかしたら2話まとめての記事となるかもしれません。

それでは次回も乞う、ご期待!