ウルトラマンガイア 第13話「マリオネットの夜」(1998年11月28日放送)

ネタバレを含む考察・感想記事となります。

超空間波動怪獣 サイコメザード  登場


監督    根本実樹
脚本    長谷川圭一
特技監督 佐川和夫

恐怖の集団暴動【波動生命体の脅威、再び】


街を砂漠化させた波動生命体メザード
今回はその第2章ということで同種怪獣サイコメザードが敵として立ちはだかります。
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人の「頭の中を覗いていた」前回と同様、今回も人間に興味を持ったメザードは『実験』で人々を恐怖に陥れます。

その手法とは電話回線を通じて、人の精神に介入し自分の支配下に置く、言うなれば洗脳です。
効果は凄まじく今回の舞台となる城岩温泉郷の前に、アメリカのリゾート地で暴動を起こし閉鎖に追いやっています。


住人が操られ…はウルトラシリーズでは珍しいことではありませんが、今回はメザードの恐怖をしっかりと落とし込んだ映像面の仕上がりを特に評価したいなと。


温泉郷から送られたビデオレターに映っていたアメリカの暴動映像から事態の深刻さを知るKCBクルーという構図。
KCBクルーの車両にいきなり流れるアメリカの暴動映像が流れた直後に、サイコメザードの意識が田端さん達へ襲ってくるホラー性。
事あるごとに鳴り響く電話の着信音(サイコメザードが人間を操る信号)の不気味さ。
そしてサイコメザードがガイアと対峙した際に、住民を盾にする狡猾さも描かれます。

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結果としてアグルに撃破されるわけですが、
どこまでも『人間』という個の存在に執着したメザードの侵略は恐ろしいとしか言いようがありません。

更に恐ろしいのは、これで終わらないという事実でしょう……人の精神を侵食するメザードの攻勢はまだ続きます。




KCBの勇姿を見よ!!【真実の追究者】


今回は温泉郷へ取材を行うKCBクルー、特に田端さんが主役として描かれます。

前述した暴動映像を収めたビデオが温泉郷の少年タカシ君からKCBクルーへ送られて、物語が始まるのです。
(ちなみにタカシ君は我夢の親友サトウの弟です。サトウ自身も失恋のショックで里帰りしサイコメザードに洗脳されます…可哀想)


根源的破滅招来体が何故地球を、人間を襲うのか?そこに明確な意思があるのではないか?


ジャーナリズム精神で番組制作に関わる田端さんですが、「視聴率が取れない」と上司から叱責をくらいます。
お堅い番組では視聴率が取れず、上は『分かりやすい』番組を望む。
数字が全てと言えばそれまでですが、田端さんは納得がいきません。



そんな中で飛び込んできた件のビデオ。
都合が良いことにKCBクルーは温泉番組の取材で城岩温泉郷へ向かうことが決まっていたので、
田端さんは何かあると睨んだビデオの一件を解明すべく玲子さんとリンブンを伴い意気揚々と向かうのです。



しかし現地に着くなり洗脳された人々に襲撃されたクルー。
リンブンは洗脳され、玲子さんを逃がす一方で田端さんは取材を強行します。


「落ち着け、こんな時こそ落ち着くのが報道ってもんだ!」(田端)
「俺は俺のやり方で戦ってやる!!」

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暴徒化した住民から逃げつつカメラを回し、真実を焼きつけようとする田端さんの姿がどこまでもカッコイイ……。
やがて、ビルの屋上に逃げ込んだ田端さんはビデオの送り主タカシ君と出会います。

たった一人だけ難を逃れた少年は疲れ、傷つき、そして怯えていました。
田端さんはタカシ君を必死に勇気づけます。


「おじさん、人は死んだらどこへ行くの?」(タカシ)
「え?」(田端)
「天国って本当にあるのかな…」(タカシ)
「どうかな…でもタカシくんもおじさんもまだ死にはしない…天国?」(田端)
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報道という立場ではありますが、メッセージを送ったタカシ君から見たら田端さんもまたある意味ヒーローに見えたのかもしれません。
そして、死を覚悟した少年の『天国』という言葉からある発想を得た田端さんのアイディアが彼らを救うことになります。



サトウの実家近くでの微弱なマイクロ波の上昇が気になった我夢はファイターで温泉郷にやってきます。
しかし空から一見しただけでは変化は分かりません。
帰投しかけるファイター。
しかし我夢は屋上で輝く『S・O・S』のサインを見つけ、街に異変が起きたことを知るのです。

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このSOSサイン。暴徒を抑えながらも田端さんがタカシ君に指示を送り、照明を配置、ライトアップして気づかせたのです。




ファイターを「天からの助け」と称した田端さん。
天国というワードから、通信が不可能ならば物理的にメッセージを空へ送ればいいと気づいたのでしょう。
空、すなわちXIGの天空の居城エリアルベースの存在がその念頭にあったと思われます。(実際は我夢が偶然来たから、発見されたわけですが)


余談ではありますが、前回のメザード編のサブタイトルは「天空の我夢」で我夢のファイター初操縦を描いていました。
今回も空から降り立った我夢が大きな希望となって人々を救うという、同じ構図、同じキーワードになってるんですよね。
脚本家の長谷川さんはその辺りも意識されたのかな?と推測します。



一方の玲子さんは、逃げろと言われたにも関わらず田端さんを救うために引き返します。
その過程で藤宮と出会い彼に助けられるのですが、

「無駄だよ!存在理由のない人間はいずれ消える」(藤宮)

とメザードの実験を容認するかのような発言と彼の思想の根底にある人間不要論を目の当たりにします。
(彼の目的から考えると、メザードに洗脳された人間を救う理由はないので、
純粋に根源的破滅招来体を分析するために前回の現場と今回の温泉郷に留まっていたと考えるのが自然かと)


その言葉に反発する玲子さんは「人の存在理由って誰が決めるのよ!!」と反論し、藤宮と別れます。


その後実態化したサイコメザードの攻撃が玲子さんに降りかかろうとしたその時、藤宮はアグルに変身し庇います。

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それまでの言動からすると大きな矛盾が生じる行動ですが、彼はそのままサイコメザードを撃破し、去っていきます。


「もう一人の巨人、やつも俺達人間の味方なのか?」(田端)
「絶対そうよ…」(玲子)


まだその存在が大きく知られていないアグル。
田端さんはその存在にまだ答えを見出せませんが、玲子さんは信じたいと願うのです、自分を助けてくれた存在を。


事件が収束し、これは特大のスクープを撮れた!!報道局へ返り咲ける!!と喜びに沸き立つ一同でしたが、
映っていたのはノイズだけで何も記録できていません……。

「全て無駄だったのか…」と落ち込みかける田端さん。
ですが、正気に戻った家族と再会するタカシ君、不安で怯えていた少年の顔に笑顔が戻ったことを知り、
いつもの熱血漢ぶりで次の取材へ向かうのです。




総括


XIGの次に物語における比重が高いKCBクルー。
マスコミという立場上XIGに疑義の目を向けることも多々ありますが、
彼らにも一貫した信念がありそのために命をかけるジャーナリズム精神や人助けを躊躇しない温かさを持っている。
今回はそれが魅力的に詰め込まれたお話です。


以前も触れましたが、ネクサスの姫矢などなど脚本家の長谷川さんはジャーナリスト系キャラを書かせたら一級品の人ですね。
人を狂気へとかきたてるメザードも長谷川さんの持ち味のサイコホラー要素の申し子とも言えるのですが…(笑)




次回はガイアとアグルが共闘する…?第14話「反宇宙からの挑戦」です。
次回も乞う、ご期待!!