ウルトラマンガイア 第9話「シーガル飛び立つ」(1998年10月31日)

ネタバレを含む考察・感想記事となります。


高熱魔石 レザイト  登場


監督   村石宏實
脚本   太田愛
特技監督 村石宏實 

今回の脚本を担当されたのは太田愛氏。
ウルトラマンティガにて特撮脚本家デビューされた太田さんは
ティガの「出番だデバン!」「オビコを見た!」、ダイナの「少年宇宙人」「ぼくたちの地球がみたい」などなど他の回とは全く異質な空気感を醸し出しながらも、意外な角度からゲストたちをフォーカスする繊細なタッチが持ち味の脚本家さんです。



その太田さんが今回光を当てるのはいつもはピースキャリーを操縦する神山さんがリーダーを務める人命救助専門部隊『チーム・シーガル』です。


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それまでも防衛隊員が一般人の救助に当たってはいましたが、専門部隊を設置はなかなか珍しい。XIGの組織としての重厚な布陣が感じ取れます。

(ちなみに今回、我夢は主人公ではありません)

神山さんに加えて松尾蓮二隊員とマイクル・シモンズ隊員の3人構成であるこのレスキュー部隊はまだ出動実績がありません。

自分達が出動するような事態が起きないこと、それが一番いい事だと彼らは納得していましたが、ついにその時がやってきてしまいましたというのが今回のお話。




宇宙から飛来して来た謎の物体『レザイト』。
どうやら東京のパイプラインを破壊しようとしているらしいこの敵に対し、XIGが全面攻勢に打って出る…ことが出来たらどれだけ簡単な話だったでしょう。

落下の衝撃で付近のビルに居た『怪獣災害基金を作る会』の職員二人が取り残されてしまったのです。




ファイターチームとオペレーションルームが特殊な能力を持つレザイトと対峙しつつ、チーム・シーガルが過酷な現場へレスキューに出向く。
この同時並行の物語展開と一刻進む度に新たな危機的状況が生まれるスリリングな感覚の二本立てが今回の見所と言えるでしょう。




シーガルによるレスキュー行動も実にリアリティ溢れる描写となっています。
神山・松尾両名によるビルへの突入、機材を使っての障害突破、救助者に対しての途切れない呼びかけ(意識を途絶えさせないための)。

更にテクニックだけではありません。
時間が経過し危険な状態になった場合は、ビル上空に浮遊する『シーガルフローター』にて待機するマイクルへ退避するよう神山リーダーが命令を下します。
巻き添えには出来ないという隊長としての判断と『もしも』があり得る現場・戦場を熟知しているからの現実的思考ですね。


18歳からレスキューに従事していたという神山リーダーの言葉の重みも印象的です。


「レスキューって仕事はな、救助を待ち望んだ人間の力尽きて息絶えた遺体を運ばなければならない時もある。
ようやく助け出した人の命が自分の腕の中で消えていくのを見なければならないこともある。
それでも自分の手で一つでも命が救えれば…そう思わなければやってられない」(神山)



ギリギリの中で生存していた人々をレスキューすることに成功したシーガル。



見届け安堵する暇もなく、チームライトニングそして駆けつけたガイアによってレザイトは撃破されます。
今回は戦闘がメインではないのでここら辺はアッサリですね(笑)


ラストにて、救助された男性のインタビュー映像を見るシーガル隊員と我夢。


男性は「チームシーガルの松尾」を「チムシガル・マッツオ」と聞き間違えていました。
朦朧とする意識の中でイタリア人と間違えたという安定のオチで今回は終わりです(笑)





総括


このブログでお話する機会が無かったので初めての言及となりますが、
管理人は「特警ウインスペクター」などの所謂レスキューポリスシリーズの大ファンであります。

人命救助を第一に掲げ死地に赴くレスキューの使命を背負った者たち、
私は現実世界でヒーローと呼べる存在がいるとするならまさにこういった人々の事を差すのだろうと思っています。
まさかウルトラマンでレスキュー専門部隊のお話が見られるとは…。

レスキュー従事者の信念を語らせた太田愛さん脚本の独特な切り口も活き、
『戦うこと以外に命をかけた者たちのヒロイズム』が完成された一作、傑作回と言っていいでしょう。

個人的には「人が救えない結果に陥ってもそこで立ち止まらず、次の人を助ける為に動き続ける」という
常に真正面から向き合っているであろうレスキュー従事者の決して消えない想いに言及したのが良いなと思います。



またシーガルと救助者に試練を与え続けるレザイトのギミック(重力場、体組織変化、触手)も
「救助の壁」「戦闘面におけるウルトラマンの敵」の両面を満たすべくよく練られた敵でした。
冷凍窒素弾やリパルサーミサイルといった対抗手段を講じる度に、新たな能力を開花、別の危機を誘発するという一進一退の攻防。
『理解出来ない敵』と戦う難しさはこれまでも描かれてきましたが、
今回は『一般市民』の視点・レスキューを阻害する脅威という今までになかった面が強調されており、怪獣の恐怖を身近に感じる効果もあります。


あ、そういえば神山リーダー演じる権藤俊輔さんはガイアのスーツアクターさんをしつつも俳優として神山さんを演じてるんですよね!!(もっと早く触れろ!!)



次回は最後のスカイチーム「チームクロウ」がいよいよ登場し、更に全スカイチーム出撃の大作戦が発動される10話「ロック・ファイト」となります。

次回も乞う、ご期待!