ついに終盤戦へと突入したGRIDMAN。
その幕開けを飾るかのように、驚きの展開が次から次へと押し寄せる内容となっておりますが……余韻よりは不安が残る何とも言えない回となっていましたね。 


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 六花の告白により、また一歩世界の真実へと近づいたグリッドマン同盟。
新条アカネが「神様」であることに疑いの余地が無くなり、同盟はアカネの自宅へ押し掛け接触を試みますが、先手を打ったアカネは逃亡(コンピューターワールドのどこかへ逃げた?)、製作者がいなくなったことで当然怪獣も現れず、今までの戦いがまるで嘘かのように平穏な日々が訪れます。
その間も
「神・新条アカネがいなくなったらこの世界はどうなってしまうのか?」
「人の記憶に介入出来るのは霧の向こうに座す怪獣による神経性の毒ガス」
「裕太の記憶喪失と霧(毒ガス)は関係ないのでは?」
「グリッドマンと新世紀中学生は元々同一の存在だったのではないか?」

と同盟の面々による現状考察がされていて、興味深い会話が繰り広げられていましたね。


 そして怪獣が再び表れ、ドラマは絶え間なく進行します。
打倒グリッドマンの妄執に囚われているアンチは怪獣なのか?生き物なのか?
アンチと接触を続けるキャリバーさんの見解を受けて、グリッドマン同盟は「アカネの悪意から産まれた怪獣とは違う、心を持った生き物」であると認識し、
創造主のアカネも「人間のようになってしまった怪獣」と断定し、アンチを追い払います。

 雨模様の中で決別するアカネとアンチ、そして怪獣の死体から現れたもう一体の怪獣が霧の向こうの怪獣を斬首し崩壊していく世界、その終末を否応なく美しく昇華してしまうBGM「心の瞳」…と荘厳とすら思えてくる場面作りには新世紀エヴァンゲリオンへのリスペクト(ベートーベンの「第九」が流れる中での渚カヲルとの死闘、バッハの「G線上のアリア」をBGMにエヴァ量産機と戦う弐号機などなど)を感じますし、アカネの繊細さと合致しているように思えました。


 そして、現れた怪獣がなかなかの逸材……第一形態は不格好、キュートで強いとは思えぬ強いて言えばマスコット系の怪獣なのですが、その死体の背中から現れる第2形態がザ・異色……
背中を開いて現れることそれ自体が、怪獣を演じる、スーツアクター所謂「中の人」のメタファーに他ならないのですが、人のスタイルラインほぼまんまな容姿、変則的な動き方、不気味な鳴き声、フルパワーグリッドマンの外装を剥ぎ取り、本体のグリッドマンを絞殺しようと試みる、新条アカネに内在する悪意の塊そのものと言える異質さに圧倒されます……。

 そんな窮地からグリッドマンを助けるのが妥当グリッドマンの妄執に囚われていたアンチが進化した「グリッドナイト」というところが今回最大の燃えポイント。
 特撮版TVシリーズ、没企画となったグリッドマンF、などのネタが散見される本作において、TVシリーズ中盤で武史が変身すると予定されていながら結果的に実現されなかった「グリッドナイト」がもしかしたら登場するのでは?と予想する声があったのですが、それが見事アニメ版で実現した形となります。


 そして、その登場もアイディアの流用ありきではなく、
「宿敵グリッドマンを倒すために、自身がグリッドマンと共に戦う」という今まで悩んでいた矛盾をレゾンデートルへと転化し、オリジナルの自分をついに獲得するという、アンチの物語に待ち受ける必然として描き切ってのもの、だということは押さえておくべきでしょう。
 「人の気持ちを読むから怪獣ではない」としてアカネに捨てられた彼だからこそ、アカネの憎悪そのものである怪獣の動き(心の動き)を見破っての勝利、という理屈も大変頷けます。
 他の誰とも違う、「自分だけの自分」を志向するストーリーは近作だとウルトラマンジードに似ている気がしますね。

 
 戦闘後、「絢」に現れたアカネは、グリッドマンの正体がそれまで想定していた「裕太単独の変身」ではなく、中古PCジャンクの中に存在していたと知ります。ジャンクショップに集まる物品を「人が要らなくなった物が集まる場所(捨てたものなんて神様でもイチイチ覚えていない)」と言い切った意味を推察したくなりますが、ここで裕太はアカネは宇宙人に利用されている…と歩み寄ります。
 彼女の救済を決意した前回を思い出せば理解できる行動ですが、そんな裕太の胸の中へ勢いよく飛び込んだアカネはカッターナイフを握っていました……。

「私も、グリッドマンと話してみたかったな」

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 床に倒れ込む裕太、鮮血に染まるカッターナイフ……ここでEDが始まり、今週の物語は終了です。

 元々アカネのカッターはOPでも意味深に登場しており、特撮版で同じポジションにいる藤堂武史が自身のIF的存在タケオの殺害に用いた(あと一歩の所で踏みとどまり、武史は一線を越えませんでした)カッターと似ていると話題になっていた代物だったのですが、意外すぎる活用に声も出ない終幕でした……。
 思えば、まるで藤堂武史を女性に置き換えた存在ではないかと話題を掻っ攫ったアカネですが、未だに彼女を凶行へと駆り立てているバックボーンが不明瞭で、その結末が全く予想出来ません……アレクシスの「本当の人間は寝たりしないよ」という意味深な台詞も気になる所ですし、怪獣と生き物の境界論もアンチだけに留まらずあるいは……という予感すらしています。



 残り2話で如何なる決着を見せるのか、見守りたいと思います。


 ボイスドラマは、アカネが失踪し怪獣出現が止んでいた時期と思われるややラブコメ臭強めのお話。なみことはっすが大活躍する日常話で、裕太が刺された衝撃が一時的に中和されます……(?)