ティガ、ダイナ、ガイア、合わせて『TDG』。
平成初期ウルトラ三部作をそう呼称することを今年2018年になって初めて知り、ウルトラシリーズについて自分はまだまだ無知だと感じたものです。
 さて、何故今になってTDGの意味を知ることになったのかと言えば、今年がガイア放送開始から20周年というアニバーサリーイヤーであり、円谷プロも嬉しいことに関連企画を積極的に打っているからに他なりません。
 

 現在、ウルトラマンガイアTV本編が毎週Youtube円谷プロ公式チャンネルで配信されているのは読者の皆さんもご承知のことと思いますが、なんと今週から4週連続でガイア劇場版の無料配信が開始されました。
 ですのでこのブログでも4週連続で感想を投稿することにしました。お付き合いのほどをよろしくお願い申し上げます。

 




 今回の配信は、11月30日発売予定で本映画の後日談とされる小説「ティガ・ダイナ&ウルトラマンガイア~超時空のアドベンチャー~」に合わせたタイミングだと思われますが、個人的には本映画の脚本及び後日談小説の著者である長谷川圭一さんがシリーズ構成を務める現在絶賛放送中のアニメ『SSSS.GRIDMAN』との比較をしても楽しめる、そういう作品でもあるし、良い時期だったなと勝手に思う次第です。
 特撮版グリッドマン、あるいはアニメ版のレビューをした際、都度言及した話ではありますが、グリッドマンというコンテンツそれ自体に「平成ウルトラ」の血が通っており、類似点が散見されます。
 該当の場面が来た際に指摘したいと考えていますが、今回はこの程度で留めることにします。


 物語は、我らがXIG隊員・高山我夢が巨大異形獣サタンビゾーに立ち向かう、本編さながらの熱い戦いから幕を開ける……ように思わせる、という壮大なフリから始まります。
 本当の主人公は、新星勉、小学三年生。
冒頭は、ガイア本編世界とは違う平行世界で、彼がVHSに録画していた特撮ドラマ『ウルトラマンガイア』の映像です。
 勉たちの世界において、ウルトラマンガイアとは実際に存在する光の巨人ではなく、実際に放送されている特撮番組のヒーロー。
 非常にメタな構造を観客に提示して始まるという、なかなかにとんでもない映画だと分かります。
ティガ・ダイナの2作とガイアの世界観が異なることと、原典に沿った場合オリジナルのティガとダイナが大変登場させにくいということもあって、パラレルワールドを取り入れた展開になったそうです。


 第1章は、勉を主人公とするジュブナイル的色彩が強いドラマとなっており、ウルトラ的なものからかけ離れた展開で進んでいきます(とは言うものの、非日常的要素も着実に仕込まれているのですが)。
このテイストは、後年の『ウルトラマンコスモス THE FIRST CONTACT』に近さを感じます。


 開始早々、特撮少年である勉を取り巻く日々の日常にグッと引きつけられます。
 年頃の息子にウルトラマンからの卒業を望む母親、特撮を愛好し続ける勉君に呆れる学友・平間優、「そろそろウルトラとか、卒業せいや」と勉をからかう上級生・鹿島田浩たち――巧みなその掴み方がとても秀逸だと言わざるを得ない。
それほどまでに生々しく、いや我々にとって既視感というべき体験を見させられます。
肌身に憶えている抑圧、強い言葉を借りればそう形容したくなる。勉少年の周辺関係には年長の観客ほど身につまされる思いをすることと思います。
 しかし、歳を取るにつれてある程度の「折り合い」はつけなければならないということも理解できるようになってくるわけで……微妙な『境界線』の突き方が実に上手いドラマ構造となっています。

 ですが、この映画は特撮少年が「普通になること」を望む環境に辟易するだけでは終わりません。
ある日、勉が夢で見た、赤い玉と破滅していく世界で「何も変わらない……」と諦める少女。
その夢がまるで予知夢であると言わんばかりに少女と瓜二つな転校生・七瀬リサ、そして勉が秘密基地のように使う廃工場内には赤い玉、がそれぞれ忽然と姿を表します。
 玉は「願いは全て現実になる」と語り、リサは勉に試してみればいいと促し、勉は「本物の我夢」に会いたいと願います。
 結果、ファイターEXに搭乗した『ガイア本編世界の我夢』が勉の世界へと来訪。
ですが、玉を奪い取った上級生・浩の願いによって怪獣『サタンビゾー』も現れることとなり、応戦するべく我夢がウルトラマンガイアへと変身したところで第1章は終了します。


 退屈で、鬱陶しくて、自分の行き場を持てなかった日常にTVの向こう側に広がっていたファンタジーが介入し、激変する――第1章をざっとまとめるとこんなところでしょうか。
同時にこの映画のクライマックスを劇的な方向へと導くための伏線が仕掛けられていたことも見逃せません。

・怪獣の攻撃でエスプレンダーと引き離された我夢。
強風に煽られる鉄骨の上にあるそれを、一歩間違えば転落する状況下であるにも関わらず、取りに行く勇気。
・校庭に描かれた勉のウルトラマンと街で暴れる怪獣の落書きに「暴力って嫌いだもん」と述べるリサ(勉がメインにしたかったのは怪獣から人々を守るウルトラマンであるにも関わらず)。
・サタンビゾーを呼び出した浩の勉に対する「お前みたいな"根暗怪獣オタク"はぺしゃんこに踏みつぶさせてやる!」という台詞(直後の浩がサタンビゾーの詳細スペックを早口でなおかつ諳んじていることから、ある程度ウルトラの知識に通じていることが分かり、その点からも"不可解"に思える発言なのですが……実は)。


 1年ほど前に視聴したっきりでしたが、改めて観ると、そうだったのかと思える場面が多く興味深い。
面白い作品は何度観直しても、その度に新鮮で、解釈という刺激を与えてくれますね。


 今回は4つのエピソードに分割された上での感想、本来の形式である映画視聴時とはまた違った感触を私自身も含めて、得られるであろうと思い投稿させていただきましたが、如何だったでしょう?


 次回も乞う、ご期待!