ウルトラマンガイア 第6話「あざ笑う眼」(1998年10月10日放送)
奇獣 ガンQ 登場
監督 北浦嗣巳
脚本 原田昌樹
特技監督 川上英幸
未知への畏怖【天才の葛藤】
奇獣ガンQ。
今回は後のウルトラシリーズ作品で度々登場するインパクト大のこの怪獣との攻防が描かれます。
チーム・ライトニングとファルコンの合同演習中、突如山に現れた巨大な目玉。
我夢は分析を行いますが、進めれば進める程『存在している理由が分からない』という結果しか得られません。
正体を掴もうと必死に思考する中でプレッシャーを感じる我夢の脳内は自分を嘲笑う者として過去のいじめっ子、そして藤宮の姿を浮かべてしまいます。
「あの眼を攻撃してください!!」(我夢)
耐え切れなくなった我夢は早計に攻撃を進言してしまいます。
案を了承した梶尾・米田両リーダーが攻撃を開始しますが、ミサイル攻撃は巨大な眼によって吸収、吸い込まれた2本の内1本が撃ち返され、米田機は撃墜、眼は姿を消します。
幸いなことに米田リーダーは脱出に成功しますが、着地の失敗で足を負傷してしまいます。
敦子に責められる形で我夢は「分からなかった、怖かった」と心境を吐露します。
我夢はこれまでの戦いで敵を解析出来ない事態を経験しておらず、今回の事態はイレギュラーなものだったと言えます。
焦りそして天才の自負が揺るがされる中で、冷静な判断を下せず仲間に損害を与えてしまう。
ウルトラマンとしてではなく、天才にとって初めての難敵であり、初めての敗北です。
大きなショックを受けた我夢はエリアルベースを降りてしまいます。
ですが責め立てた敦子も含めて、我夢は帰ってくると信じます。
助言から生まれた勝機
その後我夢は再起しガンQと対峙することになりますが、その原動力となったのがで『仲間たちからの助言』というのが本エピソードの大きな見所となっています。
「怯える者にここにいる資格はない」(梶尾)
「我々にミサイルを撃ち込ませてどうするつもりだったんでしょう…」(米田)
「お化けや幽霊が本当に存在したとして、その存在は物理学的生物学的には分かんないけど、
その存在理由とか行動目的は理解できる」(マコト)
(時系列順)
一つ一つ細かく見ていきましょう。
1番目の梶尾さんの発言は一番最後に回して、
2番目の米田リーダーと三番目の学友マコトの台詞が「発想の切り替え」を我夢に喚起します。
敵は何故現れて、何故地球や人類を攻撃するのか?
ガイアの根源的破滅招来体、あるいはウルトラシリーズの怪獣、もっと広めるとスーパー戦隊シリーズや仮面ライダーの怪人、ゴジラ・ガメラなどの怪獣映画、作品のテイストによってに差異はあるものの、ヒーローと呼ばれる者やその支援をする人々(警察機関含む)は必ずと言っていいほどこの問いに直面します。
敵という存在を考えることは戦う上で最も重要な要素の一つなのは確かでしょう。
しかし、目前に敵が迫るという非常事態の中にあってはそれを切り分けて柔軟に対処すべきだろう…今回のお話にはそんな防衛隊の現実的思考が感じられます。
先の言葉を切り分けるとこういう分類になると思います。
「敵は何故現れて」(敵の存在理由)
「何故地球や人類を攻撃するのか?」(敵の行動目的)
米田リーダーやサトウの言っていたことは後者の「敵の行動目的」を計るという視点に繋がります。
我夢の判断ミスは前者の「敵の存在理由」に固執するあまり、次のステップ「行動目的」を計るに移行できず起きた失敗と見ることが出来ます。
ここには隊員としての経験不足の要因もあるかと思われます。
米田リーダーが敵の行動に不審を感じたのは現場で培われた経験から来ているものと見ることができますし、
ここで梶尾リーダーの発言も生きてきます。
我夢に対してキツイことを言ったように思えますが、怯えるだけでは視野が狭くなるから隊員として自信を持ち『倒すこと・守ること』のために最善を考えろ。
そんな励ましの思いが込められていたのではないか?と推察します。
敵の行動目的に着目することに気が付いた我夢は『吸収されたもう一発のミサイル』の反応でガンQの位置を把握、
コンビナートを襲撃しようとする敵の先手を取ることに成功します。
数々の金属片や岩石を吸収し、自立、ただの巨大な眼から怪獣へと変化したガンQ。
チームライトニングが苦戦する姿を見て、我夢は自分をあざ笑った『眼』にガイアとして立ち向かいます。
「もう怖くない…お前を恐れる理由など何もない」(我夢)
ガイアは吸収光線によってガンQの中に取り込まれ、無数の眼から嘲笑われる精神攻撃を受けます。
ですが、精神的成長を果たしたガイア・我夢は自ら目玉に突撃し、ガンQを爆散させます。
我夢がガンQの攻撃に気づかなかった場合、被害は相当なものになっていただろうと堤チーフと石室コマンダーは話します。
二人とも我夢の働きに満足のようです。
「当然だ、あいつは……XIGの一員なんだからな」(石室)
不自然な間はコマンダーが何かを察しているのでは?と憶測してしまいます(笑)
その日の夜、エリアルベースの食堂にて我夢は自ら梶尾リーダーに相席を求めます。
側を通りがかったチーム・ファルコンに褒められ、梶尾リーダーとも和気藹々としたやり取りを繰り広げる我夢。
『我が物顔でやって来た天才』から『仲間』として認められた…今回の戦いはそのための通過儀礼だったのかもしれません。
「勘違いするな。俺はお前の心配をするほど暇じゃない」(梶尾)
「そうですよね」(我夢)
「ヘラヘラすんな!」(梶尾)
一気に丸くなりすぎな梶尾リーダーと満更でもない我夢が面白くてしょうがないです。
何気にこの食事中、エリアルベース周囲ではまだ未登場の『チームクロウ』が演習を行っていました。
そのあまりにもアクロバティックな機動に仰天する我夢。ですが梶尾リーダーは当然という顔です。
「あれくらいで驚いてたらしょうがないぞ。お前も来週から訓練出ろ」(梶尾)
一気に距離感が縮んで仲良しになりましたとさ。
総括
今回は天才ゆえに乗り越えねばならなかった『未知への恐怖』と
それでも敵を阻止しなければならない『現場の不屈精神』の二本立てで物語が進行しました。
前者は天才だったからこそ他人の知恵を借りてこなかった我夢が「他人から得た知見で機転を利かせる」で克服しまし。
それまで解析に置いて失敗知らずで何でもできた天才の我夢に人間味を与える効果も多分にあったのかなと思いますし、スカイチームの人々とも強固な絆を得ることが出来ました。
後者の視点、『敵の正体解明』と『行動の目算を着けて阻止すること』の違いは当たり前ではあるけどあまり意識したことのない話だったなと目から鱗が落ちる気持ちになりました。
それも単純に知恵が回るから気づくという事ではなく、自分達が人類最後の砦という自覚がなければ辿り付かない論ではないでしょうか?
少し話を広げると、仮面ライダークウガやアギトで描かれた警察組織の人々もこのように状況整理をしつつ、
人間を襲うグロンギやアンノウンと対峙していたように思いますし、
現場で怪人と戦いながらも別ラインで謎の解明が進むという作風が4クール大河ドラマとしての圧倒的なカタルシスを生む土壌にもなっていたのではないでしょうか?
さて、次回は第7話『地球の洗濯』となります。
所謂自然コントロールマシーンシリーズの序章となる回で、アルケミースターズという存在に別角度から焦点が当たる重要回です。
次回も乞う、ご期待!!